同時に、新たに道を切り拓くことが求められている時代において、彼女の心の叫びは無視することはできない。激しい自省の念にかられる。
また、アインシュタインの言葉も蘇り、胸を打つ言葉をただ好きなだけで、それを生きていく中で体現していかなくては言葉の魔術に陥ってしまうと、あたらめて痛感する。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
倚(よ)りかからず
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
茨城のり子
詩人・童話作家・エッセイスト・脚本家
人に対して正しく賢明な助言をすることは出来る。
しかし、自分が正しく賢明に振る舞うことはむずかしい。
- アルベルト・アインシュタイン
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A.I